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くらげ男の日々

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06/30/21:06  カセ君

たまたま乗り合わせた帰りの電車の中で、カセ君は突然、真剣な顔でこう言った。
 
「オレは一生、オンナとは縁がないということがわかったんだ。よくわかったんだよ」
たしかにウチは中高一貫の男子校だが、“一生”って・・。
「だから・・」
カセ君は続ける。
「オレには男しかないんだ、男にすることに決めたんだ・・。」
「・・?」
 
次の日から、高校1年生のカセ君の“狩りの季節”がはじまった。
 
 
カセ君は顔も体もフランケンシュタインにそっくりな、「超」がつくほどのまじめな高校生。
高校にあがると、きちんと制服を着ている学生は少なくなる中で、カセ君は学帽まできちんとかぶって登校してくる。

授業もつねにいちばん前の席できちんと背筋を伸ばし、ノートをとる。

その大きな背中から“ぬりかべ”とも呼ばれていたカセ君の後ろの席は、先生から完全な死角になると、ほかの生徒から大人気だ。
 
カセ君の、そのまじめな授業態度に先生も思わずカセ君を当ててしまう。
そして“しまった”という表情をする。

カセクンは質問に答えられない。
まじめな授業態度をとるのに全精力を使っているので、先生の話を聞いている余力などカセ君にはのこっていないのだから・・。

ちなみにカセ君の成績はいつも最下位だ。
 
そんなカセ君には中学のときから友達らしい友達はいなかった。
授業が終わると、いつも静かに本を読んだりしていて、席から動かない。
 
          
 
・・・授業が終わると、カセ君はゆっくりとうしろを振り向き、教室中をなめるように見渡す。
休み時間になっても、教室内には熟睡していて、机にはりついたままになっている生徒が4~5人はいる。
 
カセ君の顔の動きが止まる。カセ君の目が蛇の目のようになっている。

“獲物“が決まった。
 
ゆっくりと大きな円を描くようにして“獲物”の真後ろに近づいたかと思うと、次の瞬間、熟睡している生徒のうしろから満身の力をこめて抱きつく。
“獲物“は声にならない声をあげ、必死に逃れようとするが、その行為が無駄なことは見ている誰もが知っている。
 
「オレは一生、オンナとは縁がないということがわかったんだ。よくわかったんだよ。
だから・・・、オレには男しかない、男しかいないんだよ~」
カセ君は“獲物”の耳元でくり返し,くり返し、こうささやきながら、“獲物”の頬に自分の頬をつけ、ゆっくりと頬ずりをしつづける。

そして・・・それは約10分間つづく。
 
次の授業のチャイムが鳴ると同時にカセ君は“獲物”を離れ、今までのことがウソのように、いつものように「超」がつくほどのまじめな学生にもどって、自分の席で背を伸ばし、先生がやってくるのを静かに待つ。
 
“狩り”は休み時間ごとにおこなわれるとは限らない。いつ狩りをするかは、カセ君の気分しだいだ。
しばらくやらないと思っていると、急に狩りを再開したりする。
 
 “獲物“は寝ているものだけが対象、というわけではない。
友達と話していて不用意にカセ君に背中を見せていると危ない。
急に後ろから襲われることがある
 
・・・こんな風にカセ君の“狩りの季節“は始まり、やがてほかのクラスまで遠征するようになり、隣のクラスのウチヤマ君(野球部、カセ君とはそれまでしゃべったこともない)を襲ったとき、ウチヤマ君に真剣に殴られ、寂しそうな顔をして帰ってきた時までの約1ヶ月間、続いた。
 
カセ君はそれからすこし変わった。
クラスのほかの生徒たちとも話すようになったし、冗談で笑わせることもできるようになった。
あいかわらず授業態度はまじめだったけれど。
 
カセ君は“狩り”をすることで、ほかの人との距離感を知らず知らずのうちに測っていたのかもしれない。
 
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時々挟まれる

こういうお話は実体験に絡んだものなんですか?
私ごときがいうことではないのですが、
明日からでも文筆業でいけるんじゃないでしょうか?
作品を書き溜めたりされてるんですか?

くらげ男さんも・・・まさか・・・

期待してお待ちしておりました。梅雨時になって、くらげ男さんのお散歩が減れば、この、フィクションかノンフィクションか分からないけど最高におもしろい短編小説が読めそうな気がして。

今回も特に、出だしの書き出しがスゴイですね。

カセくんの「狩りの獲物」として、くらげ男さんもまさか、背後からの抱擁、経験なさったのですか?

そして、今、カセくんは。。。どうなっておられるのでしょうね。

  • 2008年06月30日月
  • ピノノワール
  • 編集

もちろん

>ほんまさん、
・・実話です。
想像でこんなハナシ、思いつきません、ワタシ(笑)
むかしのこと、一応書き留めておこうかなぁと思って、暇なとき書いてUPしてます。

  • 2008年07月01日火
  • URL
  • くらげ男
  • 編集

対処法

>ピノノワール さん、
カセ君の狩りの気配を感じると、クラスのみんなは静かに教室のうしろに立ちます。
教室の後ろに立つのは、カセ君に後ろに回られないようにするため、静かに移動するのは、獲物が目を覚ましては、せっかくのショーが見れなくなってしまうからです。

ワタシも襲われたことがあります。
でもそのときには襲われたときの対処法が開発されていました。
その対処法とは・・・・
力を抜き、抵抗をやめ、なすがままになることです・・。
そうするとカセ君は1分くらいで、「チッ!」と舌打ちするとともにいってしまいます。
どうやらカセ君は“獲物”が抵抗しないと、燃えなかったようなのです・・。

  • 2008年07月01日火
  • URL
  • くらげ男
  • 編集
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