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くらげ男の日々

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03/14/23:59  ⑤大通り公園 右足を引きずる男

 
ずいぶん昔の話。
小春日和の暖かな11月ごろの昼下がりのことだった、と思う。

関内駅に近い大通り公園のベンチに座っていたとき、
向かいのベンチのそばに自転車を止め、4~5歳くらいの女の子と、40歳くらいのその子のお父さんとが柔らかな陽だまりの中、ハトにえさを与え始めるのを眺めていた。
止めたママチャリのカゴには真っ赤な“ポンパドウル”の袋からフランスパンが顔を出している。

『“ポンパドウル”のパンをハトにやっているのか・・・
ゼイタクだなぁ。』
 
女の子はハトが自分のところに寄ってくることがうれしくて堪らない様子で、時々嬌声をあげるのがこっちまで聞こえてくる。
お父さんは40歳くらい、メガネを掛け、いつもスーツを着て仕事をしていたために、いつのまにかビジネススーツしか似合わない体型になってしまったようなタイプ(わかる?)
今日みたいな休日の時の服装にはどこかぎこちなく見えてしまう。
 
『きっと普段は仕事人間なんだな。お金持ちで、子煩悩なお父さん、女の子はこの近くの幼稚園、住まいは元町辺りの坂にあって・・・。』そんな勝手な想像をしながらシアワセそうな親子を眺めていた。
 
ちょうどこの当時、一人ぼっちで生きていくことへのきびしさとか不安などをまるで慢性の内臓疾患の時のような、不吉さを伴った痛みのように感じ始めていた時だった。
だからこの親子の姿をついにこの世では実現しなかった、自分の理想的な人生のひとつとして見ていた様だ。
 
その時、視界の左側から何か茶色いかたまりが入ってきたのに気がついた。
 
茶色いかたまりは、ホームレスの男が、ずーっ、ずーっ、と右足を引きずりながら歩いてきた姿だった。
 
まだ紅葉には早いが、晩秋の冴え渡った青色の空や、自転車のカゴにはいった“ポンパドウル”の赤い袋など、色にあふれているこの世界にただ一人、モノトーンの世界を引きずってやってきたような違和感を男は周囲に与えているように思えた。
その男は長髪で、顔中がひげで覆われていた。そこに白髪などは見えなかったから、歳は案外若いのかもしれない。
よく見ると足を引きずっているのは足が悪いためではなくて、右の靴のかかとの部分が靴底の部分とパカパカと離れてしまっていて引きずるように歩かないと歩きづらいのだ、ということが分かった。

男は“ポンパドウル”の袋から顔を出していたフランスパンに気づいたのだろうか、自転車の後ろあたりで立ち止まった。
そこは、親子からはほぼ真後ろに当たるので、彼らはまったく男に気づいていない様子で、あいかわらずパンをあげては女の子が嬌声をあげて喜んでいた。
 
そのうちに、じっと自転車のパンのあたりを見つめていた男は、突然手を伸ばし、フランスパンをちぎっては口に入れて食べ始めた。
 
この時、何か音がしたのだろうか、あるいは男の気配が伝わったのだろうか、お父さんが後ろを振り返った。

その時のお父さんの変わり様は忘れられない。

今まであんなに優しそうな顔をして娘と遊んでいたのに、時々見えるその横顔はまるでヤクザのような顔つきになって、男に大きな声で怒鳴り始めた。見ていて何もそこまで罵倒しなくてもいいのに、というくらい激しくなにやら男に向かってどなっていた。
 
『何であんなに怒っているのだろう?ハトにあげる位
くらいなら、人間にやった方がいいだろうに』とその時は不思議な思いでその光景を眺めていた。
 
後になって思えば、お父さんの気持ちも分かる。
男が一言、なにかお父さんに言っておけば、気持ちよくあげたんだと思う(たぶん)
自分のパンをなんの断りもなしに食べられた、という事がお父さんのプライドを傷けたんだと思う。
それと、もしかしたらそのお父さんは普段怒ったことがあまりなかったということもあったかもしれない。
どの程度怒って見せれば自分の怒りが伝わるのかという見当がつかなかった。それで、ついついここまで大げさに怒ってしまったのではないだろうか。
 
男はお父さんの方を見ず、じっとしていたが、何か男のプライドを傷つけることを言われたからなのであろうか?突然お父さんの方へ向くと、半歩前に踏み出した。
お父さんが一瞬ひるむのが分かる。
見ているこちらも緊張する。
男は一秒ほどお父さんの方へ向いていたが、すぐに横の方へ向き直し、何事もなかったように、ずーっ、ずーっ、と右足を引きずりながら、再び歩き出した。

『男は生きてゆくのに精一杯で、プライドを傷つけられたからといって、喧嘩をして無駄なエネルギーを使う事のばからしい、と思ったんだな』
 
親子はまたハトにパンをあげ始めたようだが、私の目は男の方へいく。
男は、公園の砂利をずーっ、ずーっ、と音を立てて引きずりながら、まるで何か重たいものを背負っているかのように背を丸め、見えない縄に縛られていて、その縄で引かれていくかのようにして長者町のほうへ去っていく。
男の背中を目で追いながら、心の中で、知らず知らずに呟いていた。

忘れてはいけない、
この光景をよく覚えておくんだ。

私は彼の姿から目が離せない。
 
勘違いすることのないように、
よく見ておくんだ。
お前は彼側の人間なんだということを
忘れてはいけない、
よく覚えておくんだ。

今でも何かの拍子に、彼のずーっ、ずーっ、と足を引きずりながら歩く姿と、この時の呟きを思い出す。
 
 
 
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02/25/22:02  ④福富町の全力疾走男

 
去年の夏、アツーイ日の事。
真夏の強い日差しの中、汗だくになりながらフラフラと散歩していた。 
今日は暑いなー。何でこんな日に散歩などしてんだろう?という後悔の念が歩けば歩くほど強くなる。

 
路上駐車の車がびっしりと並んでいる一方通行の道を歩いていると、そこに宅急便のトラックがやって来て、わずかに開いていたスペースに駐車しようと切り返しを繰り返し始めた。
運転していたオニーチャンは顔を窓から出し、強烈な日差し中、何回も切り返して、ぎりぎりのスペースに大きな配達のトラックを上手に止める。
大変だなー、こんなスペースに止めなきゃならないなんてと思う間もなく、その宅急便のオニーチャンはトラックの運転席から飛び出し、全速力で福富町の方へ走っていった。
 
・ ・・・自分はあんなに情熱を持って仕事しているだろうか?
 
 仕事にかけるオニーチャンのアツい姿と自分とを比べてへこむ。
 ・・・ただでさえこの暑さでマイっているというのに。
 
この猛暑の中、全速力で走るなんて・・・。自分も少しは彼に見習って、もっと情熱を持って仕事をしなければ、などと反省しつつ、福富町を目指す。
そこはアーケードになっていて、この強い日差しから逃れることができるので・・・。
 
福富町に着くと大盛りで有名な洋食屋さん、イタリーノの前に行列ができているのを発見!
ちょうどお昼ごろという時間のためか、お店の前に4~5人の人が店の前に並んでいる。

 
行列をしているのを見つけると、並んでいる人たちの顔を眺めるが癖になっている。
 
私は行列に並ぶことが出来ない。込んでいる店にさえ入れないのに、行列に並ぶなんて・・・。
そこまでの情熱は自分のどこを捜してもないみたい・・・。
・・今度生まれ変わった時にこの人たちのような顔つきに生まれれば、もっと前向きに生きられそうな感じがするので、参考にしようと・・・。
 
一番前に並んでいる人たちから順番にお顔を拝見していくとー、後ろから2番目に並んでいる人になにやら見覚えがあるような気が・・・
細身、汗が額からしたたり落ちて、肩で息をしている、青と白のボーダーのポロシャツを着たオニーチャン・・・・
あっ!このポロシャツはー、
 
さっき、全力疾走していった宅急便のオニーチャンじゃないですかー!!
 
エー!?
ってことはー、この暑い中、何回も切り返しをして、あの狭いスペースに車を止め、さらに全速力で走ったのは・・仕事のためではなくて・・ここに並ぶためだったの?
どうして?そこまでしてイタリーノでお昼を食べたい?
イタリーノって、揚げ物大盛り・・・・、真夏に?
ここじゃなくてはダメなの?
もっとクルマ止めやすい所に、安くて大盛りのトコだってあるのでは?
何も並んでまで・・・この暑い中・・・
ナゼ?
何とかこのオニーチャンの行動について、共感できるところを見つけようと努力するが・・見つからない!
宮川橋を渡り、野毛を通り、桜木町に着くまで、オニーチャンのことを考えたが・・・ダメ!見つけられなかった・・・。
 
ひとつでも共感できる点があれば、それが現実の社会に対してもっと前向きになれるきっかけのようになると思ったんだけど・・・
 
それ以来、イタリーノには入れない。
結構遅くまでランチタイムがあって、何度か入る機会があったのだけど、入ろうとするとあの宅急便のオニーチャンの事を思い出してしまって・・・。
自分が入ることで、あのオニーチャンと同じくらいの情熱でやってきた人が外で並ぶような事になったら、と思うと入るのがためらわれる。
自分が持っているこのお店で食事しようという情熱では、ここに入る資格がないよーな気がして。
 
共感できる部分が少しでもあれば・・・
 
このオニーチャンの行動、共感できる点アリマスカ?
 
 
 
 
 
 

01/31/00:00  ③伊勢佐木町モールの日時計男

e39f2c93.jpg伊勢佐木町4丁目にある“青江美奈”さんのモニュメント。そのそばに、白木蓮の木がありますね。(こぶしかも・・・)
私が春の訪れを感じるのは、伊勢佐木町モールの白い、白木蓮の花が咲き始めるのをながめる時。
寒さの中にも、春がやってくる、という希望が感じられて、3月のこの時期が一年で一番好きだ。

この話はこのモニュメントがまだなかった頃の話。
それも真夏のアツーイ盛りの時のこと。


散歩で汗びっしょりになりながら、ここら辺に差し掛かったとき、ここの白木蓮の幹を股に挟んで、仰向けに気持ちよく寝ているホームレスのおっさんを見かけた。
ナニゆえ?
この人通りの多いところに仰向けで寝ているだけでも十分変わっていると言えるが、さらに白木蓮の幹を股にはさんでいるとは・・・

股がかゆいから? それともフロイト的に解釈しろとでも・・・?

2~3時間後、帰りに再び通りかかると、まだ幹を股にはさんで寝ているではないですかー!

オッサンのことすっかり忘れてたので、最初に見た時と同じぐらいびっくりしちゃった。

真夏のツヨーイ日差しが、トーストを焼くように肌をちりちりと焼いていくように感じられる。
暑さでボーっとした中で、ふとオッサンの位置が往きで見た時と微妙に違っているのに気づく。

そのとき、ワタクシの灰色の脳細胞にスパークが!

その男はどうしても仰向けで、体を伸ばして寝たかった。
ベンチに座って居眠りしたり、何かに寄りかかって眠ったり、体を丸めて寝たりするのはもうたくさんだ!

男はそう思っていた。

強烈な日差しの中、男は白木蓮の木に目をやった。
この木の木陰で、仰向けになって、体を伸ばして眠りたい・・・。男は木陰に入って、ゆっくりと体を伸ばした。
真夏の太陽は、真上から当たってていて、木陰は男の体を全部は覆いきれない。
どう位置を工夫しても、体を伸ばした状態では、足か頭がどうしても日に照らされてしまうのだ。
男は真夏の強烈な太陽の日差しを恨めしげに見上げながら、思わず心の中で悪態をつく。

“俺のこのささやかな願いもこの世の中では叶えられないというのか?”

そのとき突然、男は何かを思いつく。

男の顔に希望の光が・・・。
男は勝利の笑みを浮かべながら、ゆっくりとその幹を股に挟み、体を伸ばすのだった。

ソウイウコトダッタンデスネ。
キット。

時間が経って、太陽が傾くと木陰もまたビミョウに移動するので、おっさんはその度に体の位置をずらしていく。

その結果、そのオッサンは“伊勢佐木町4丁目の人間日時計”となったのであった。

原宿の表参道が、若い女の子が似合うように、伊勢佐木町は、変なオッサンが似合う町。
真夏の昼下がり、木を股に挟んでシアワセそうに眠るオッサンと、それを心底感心して眺めるキモイオッサン。

こうして、変なオッサンの似合う伊勢佐木モールにふさわしい光景がまた一つ増えたのでした。

01/16/23:45  ②横浜橋商店街の放火オヤジ

10年以上前のお正月の昼下がり。

横浜橋商店街の裏、大鷲神社がある通りを大通り公園に向かって歩いていた時、自分の前をすっかり酔っ払ったオヤジがよろよろと歩いているのに気づく。

後ろに追いついたとき、オヤジが何事かを呟いているのが聞こえてきた。

“タツヨシ~、このやろー”

ハハ~ン、年末に行われたボクシングの辰吉対薬師寺戦のことを言ってるんだなぁ、オヤジ、辰吉が負けたのが気に入らないんだ、そう思いながら追い抜かそうとしたとき、またオヤジが呟く。

“辰吉~、このやろー、火ぃつけたろか!”

・・・ん?今何を言った?

“辰吉~、このやろー、火ぃつけたろか!”

“火つける~?”・・・・コレはシャレにならん。オヤジを改めて見てみると、いかにもやりそうな雰囲気・・・

横浜橋商店街は古い木造の建物が立て込んでいるので、火事になったらあっという間に広がって、大火事になってしまう可能性が大きい。

もし全焼してしまったら、もうこの雰囲気の商店街は二度と戻らない。

オヤジを後ろから観察する。

年齢65歳くらい、身長160㎝以下、痩せ型、酔っ払っていてふらふらしている。・・・

ヨシ!勝てる!もしほんとに火をつけようとしたら後ろから思いっきり殴ってやろう!

そう思いながら、そのオヤジの後をつける。もうこうなったら、オヤジを無視して、歩き去ることは出来ない!

親父は何度も何度も“辰吉~、このやろー、火ぃつけたろか!”を繰り返している。

オヤジがいつ行動に移すのかと、緊張しながら後ろをついて行く。

そうしているうち、オヤジの進行方向にオバサン二人が立ち話しているのが見えた。

アブナイ!、このままだとオバサンたちがからまれてしまう!

“オバさーん!放火魔が来ますから、道どいたほうがいいですよー!”

と心の中で叫ぶが、聞こえるはずもなし!

そのうちにオバサンたちがオヤジに気づいて振り返る。・・・・。

“あらー、○○サン、おめでとうございますぅ。”

オヤジは今までふらふらだったのに、話しかけられたとたん急にシャンとして、

“あけましておめでとうございます。今年もどうかよろしくお願いいたします。”

と何度も丁寧にお辞儀しているじゃないですかー!

二言三言やり取りがあった後、“では失礼します”とおばさんたちに言った後、シャンとして歩き出す。

放火魔と思ったオヤジはここら辺ではごく平凡なオッサンだった・・・・・。

・・・この界隈に住む人のディープさを目のあたりにして、自分が何度この界隈を歩いても所詮、よそ者なのだということを思い知る。

オヤジは10歩ほどシャンとして歩いていたが、急にまたフラフラとしだし、“辰吉~、このやろー・・・・”を繰り返し始める。

もちろん、何のためらいもなくオヤジを追い越し、そのまま後ろを振り返らずに大通り公園に向かった。